姉に20000文字の論文を音読させた私が、5年後に見つけた学習補助AIツール

2026.5.28

姉に20000文字の論文を音読させた私が、5年後に見つけた学習補助AIツール

時は遡ること5年前。大学4年生の私は、それまで読めていたはずの活字が突然読めなくなった。

文字が滑る。行が飛ぶ。読んでいるはずなのに、意味が頭に入ってこない。そんな中、卒業論文の締め切りは刻一刻と近づいており、長い先行研究——論文——を読み込めない私は絶望していた。

まずい、どうしよう。私は考えた。

「そうだ、お姉ちゃんに音読してもらおう」

そして私は、2万文字近くある論文を姉に音読させるという狂気に至った。

こんな極端な体験はなくとも、思い当たる場面はあるのではないでしょうか。長い契約書、家電の説明書、難しい言葉が連なる小説の一節。「読まなければ」とわかっているのに、なぜか文字が頭に入ってこない——そんな経験は、多くの方に覚えがあるはずです。

現代社会は、言語化できる人間を「知的」と評価します。難しい言葉を使うことが、長く堅苦しい文章を読みこなせることが、能力の証明のように扱われます。そもそも「すべての人間は言語思考者(バーバルシンカー)だ」という大前提で、この社会の評価軸は作られてきました。しかし近年、視覚思考者(ビジュアルシンカー)という存在への認知が広がりつつあり、その前提自体が揺らぎ始めています。

とはいえ、時代がどう変わろうと、契約書は読まないといけないし、論文も、説明書も、なくなりはしません。姉への音読依頼も、さすがに毎回はできません。

ビジネスにおいても、大量の資料を扱ったり、契約書を読んだり、社会人になってから何かを学ぶ必要が出てくることも多く、文字と私たちの生活・ビジネスは切っても切り離せないのです。

だからこそ、「読む手段」「学ぶ手段」を増やすことが大切だと思います。

NotebookLMとは

GoogleのAIツール「NotebookLM」は、PDFや文書、ウェブページなどを読み込ませると、AIが分析・要約し、その内容に基づいて質問への回答や資料作成を支援してくれるリサーチノートツールです。最大の特徴は、一般的なAIと異なり、ユーザーが提供した「特定の資料のみ」をソースとするため、ハルシネーション(誤回答)が少なく、高い信頼性で情報を整理できる点です。基本無料で使えます。

今回は私が感動した機能、特徴をピックアップして紹介します。

①Audio Overview——耳で読む

個人的に最も感動した機能がこちら。読み込んだ資料をもとに、AIが二人のホスト役を演じ、内容を対話形式で話し合うポッドキャストを自動生成してくれます。

2万文字の論文を、姉に頼むことなく、耳から聴ける。5年前の私に教えてあげたかった…

ポイントは「ただの読み上げではない」ことです。二人が会話しながら内容を噛み砕いていくので、難しい概念も耳に入ってきやすいです。ながら聴きにも向いています。

②Q&A——わからない部分だけ聞く

資料を丸ごと読まなくても、知りたいことをチャット形式で質問できます。

「この契約書、解約したらお金かかりますか?」「この論文の結論を3行で教えて」「この物語の第3章をわかりやすい言葉に変えて」「この数式の説明を可視化して」など、質問に応じてAIが読み込んだ資料の範囲内で答えてくれるのです。

実際に、NHKデジタルマガジンに掲載されていた、視覚思考(ビジュアル・シンキング)に関する長めのコラムを2本分(約5000文字)を使って、NotebookLMの機能を試してみました。

まず、テキストや資料を読み込ませると、自動で要約が生成されます。また同時に「この資料について聞けそうな質問」を自動でいくつか提案してくれます。「視覚思考者と言語思考者の強みの違いは?」「教育やビジネスの現場で視覚思考を活かす方法は?」といった具合に。記事を読まずとも、何が書いてあるかの輪郭がつかめてしまうのです。

そこから、自作の質問を投げてみました。

「なぜビジュアルシンカーは現代社会で生きづらいとされているの?」

「逆に、言語思考者にとって不利になる例はあるの?」

どちらも、記事に書かれている情報の範囲内で答えが返ってきました。

不安な場合は「それはどこに書いてある?」と聞くと、コラムのどの部分に書いてあるかも教えてくれます。

③そのほかの機能——「自分に合った形」に変換する

NotebookLMにはまだまだ多くの機能があります。

動画解説、インフォグラフィ、スライド資料、マインドマップ、フラッシュカード、クイズ等々、同じ資料からこれだけ多様な形式に変換できます。

「文字を読む」以外の入り口が、これだけ用意されているということです。耳で聴くのが得意な人はAudio Overview、図で理解したい人はマインドマップやインフォグラフィ、クイズ形式の方が頭に入る人はクイズ機能と、自分の得意な受け取り方を選べます。

ただの文字の塊だった資料が、自分の脳に合った形に変わる。それがNotebookLMの一番すごいところだと思います。

(マインドマップに変換した図)

万能ではない、という話

しかしながら、NotebookLMはすべての人に効果的なツールではありません。 学習障害にも種類があります。音声情報の処理が苦手な方には、Audio Overviewは逆効果になる可能性があります。集中してチャットでやり取りすること自体がしんどい方もいらっしゃるでしょう。

このツールが特に合いやすいと感じるのは、「活字を目で追うことがつらい」という傾向——ディスレクシア的な困難を持つ方や、当時の私のように長文を読むことに苦労している方、視覚思考傾向のある方です。情報を耳や会話形式、図式で受け取ることができるため、かなり有効な選択肢になり得ます。

またビジネスシーンにおいても、大量の契約書や報告書を短時間で把握したい場面、会議前に資料をざっくり理解しておきたい場面など、「読む時間が足りない」状況での活用も十分に考えられます。読むことへの困難の有無にかかわらず、情報処理の効率を上げるツールとしても機能するのです。

「読む手段」「学ぶ手段」は、ひとつでなくていいと思います。

あなたにとっての入り口が、このツールかどうかはわかりません。でも、選択肢が増えることは、それだけで少し、息がしやすくなることだと思います。

「そのほかのAIツールに関する情報はこちら!」

https://creaitor.mediatry.jp/category/column