ElevenLabs実践活用術|ナレーター講師が考える、AI音声の可能性と「人間の価値」

2026.8.28

ElevenLabs実践活用術|ナレーター講師が考える、AI音声の可能性と「人間の価値」

こんにちは、プジョルです。

私は普段、養成所でナレーター講師をしていますが、最近生徒さんにこんな話をしました。

「数年かけて技術を磨いた人より、AIの読み上げのほうが自然で綺麗」

「お金を払って無名のアマチュアナレーターに依頼するより、AIに読ませたほうが安くて、クオリティも高い」

かなり辛辣な話ですが、事実そうなんです。

実際に、生徒さんへ渡している練習原稿をAI音声ツール「ElevenLabs(イレブンラボ)」で読み上げてみると、ちゃんと調整すればそこら辺の(自分も含む😢  )ナレーターよりも、自然で聞きやすい音声が生成されます。

AIの読み上げ機能は、この数年で驚くほど進化しました。

登場したばかりの頃は、誰が聞いても「ああ、AIが読んでいるな」と分かるクオリティでした。しかし現在では、ボイスモデルの進化や細かな調整機能によって、人間が読んでいる音声とほとんど区別がつかないレベルにまで到達しています。

今回は、私が実案件でも使用している音声AIツール「ElevenLabs」の使い方や便利な裏技をご紹介します。

その一方で、ナレーター講師という立場だからこそ感じる

「改善してほしい点」や、「AIがまだプロのナレーターには及ばない部分」についてもお話ししたいと思います。

頭一つ抜けるElevenLabs

まず、「なぜElevenLabsなのか」というところから。

音声AIにはさまざまな種類があります。

Gemini TTS、にじボイス、Aivis Project、VOICEPEAK、Canvaの読み上げ機能など、有名どころだけでも数多く存在します。「ずんだもん」で有名なVOICEVOXも、AIを活用した音声生成ソフトの一つです。

日本製ツールの強みと弱み

日本製の音声生成ツール(Aivis Project、VOICEPEAK等)は、アクセントやイントネーションを細かく調整できる点が大きな特徴だと感じます。

例えば「ありがとう」であれば、

「あ・り・が・と・う」

という5つの音節ごとに音程を細かく編集できます。

日本語はアクセントやイントネーションのルールが複雑な言語です。

AIでは正しいアクセントで読み分けられないケースも多いため、人が細かく修正できるこの機能は非常に便利です。

一方で、音声そのものの自然さという点では、音と音とのつながりが不自然だったり、声に抑揚がなかったりと、

かなりAIらしさが残ります。

(VOICEVOX編集画面:音節ごとに音程を細かく調整できます)

Gemini TTSは持ち上げられすぎ…?

Gemini TTSも、高品質な音声が生成できることで有名です。

実際、うまく生成されたときのクオリティはElevenLabsに匹敵すると感じます。

しかし、

  1. 声が崩れがち
  2. 音声が途中で途切れる
  3. アクセントやイントネーションが不自然に生成されることが多い
  4. ボイスモデルが少ない

など、安定性という面では少し物足りなく感じます。

2026年8月現在、日本語対応はまだ発展途上なのかもしれません。

総合的に見ると、

  • 音質
  • 自然さ
  • 使いやすさ
  • 料金

どの面から評価しても、現時点ではElevenLabsが頭一つ抜けていると感じています(※あくまで個人の感想です)。

実際に私は、Vコンや仮ナレーションだけでなく、実案件でもElevenLabsを使用しています。

ElevenLabsの基本的な使い方

まずはアカウントを作成し、ログインします。

ホーム画面左側にある「テキスト読み上げ」をクリックすると、読み上げ画面が開きます。

画面中央上部に読み上げたい文章を入力し、右側からボイスとモデルを選択します。

モデルは、クオリティを重視するならV3がおすすめです。

文章を入力すると画面下部に「音声を生成」ボタンが表示されるのでクリックしましょう。

すると音声が生成されます。

ElevenLabsでは、一度の生成で2パターンの音声が生成されます。

気に入ったほうをダウンロードし、納得できなければ、プランのクレジット内であれば何度でも再生成できます。

オーディオタグを使いこなそう

ElevenLabsにはAudio Tags(オーディオタグ)という便利な機能があります。

これは、

  • [FAST]     (スピードを速める)
  • [CHEERFUL]  (陽気に楽しい雰囲気に)
  • [JOYFUL]     (嬉しそうに)
  • [WHISPER]    (ささやき声で)
  • [EXCITED]   (興奮した感じで)

などのタグを文章の前に付けるだけで、読み方や感情表現をある程度コントロールできる機能です。

例えば、

[CHEERFUL]こんにちは!

と入力すると、明るい雰囲気で読み上げてくれます。

タグは複数指定することもでき、次のタグが登場するまで効果が続きます。

タグの一覧は「ElevenLabs タグ」で検索するとまとめサイトが見つかるので、必要なものをコピーして使うと便利です。

実案件で使える裏技

ここからは、実際の案件でも使っているちょっとしたテクニックをご紹介します。

ElevenLabsは非常に高品質ですが、音声の冒頭や最後だけ崩れることがよくあります。

そこでおすすめなのが、捨てテキストを入れる方法です。

例えば、

「こんにちは、メディアトライのプジョルです。今日はAIの読み上げ機能についてご紹介します。」

という音声を作りたい場合、

やっほー!こんにちは、メディアトライのプジョルです。今日はAIの読み上げ機能についてご紹介します。以上、プジョルでした!

のように、本当に使いたい文章の前後へ短い文章を追加して生成します。

この場合は赤字の部分が捨てテキストになります。

すると、もし音声が崩れても「捨てテキスト」の部分だけで済むので、必要な部分を綺麗に切り出せます。

あとは音声編集ソフトで不要部分をカットするだけです。

※ただし注意点も!

捨てテキストの内容も、生成される音声全体に影響を与えます。

そのため、まったく関係ない文章を入れるよりも、本編と雰囲気が近い内容を入れたほうが自然な仕上がりになります。

また、イレブンラボを商用利用するには、必ず有料プラン加入中に生成された物を使用する必要があります。詳しくは、公式が発表している利用規約を随時確認してください。

https://elevenlabs.io/ja/service-specific-terms

オーディオタグにも限界はある

便利なオーディオタグですが、万能ではありません。

例えば、もともと落ち着いた声質のボイスに

[EXCITED]

[CHEERFUL]

を指定しても、劇的に元気な声にはなりません。

タグはあくまで「補助」です。

一番重要なのは、最初にイメージへ近いボイスを選ぶことです。

ElevenLabsはボイスの視聴ができるので、「声質」「音質」「抑揚」がイメージに合ったものを選びましょう。

抑揚重視ならCapCutもおすすめ

ElevenLabsは「自然さ」に非常に優れています。

その反面、抑揚が少し控えめに感じることも…。

勢いのあるナレーションや、テンション高めのショート動画用ナレーションを作りたいなら、

CapCutのテキスト読み上げもおすすめです。

CapCutはByteDance社独自の音声合成AIを採用しており、SNS向けらしい勢いのある読み方が得意です。

もちろん、日本語ボイスの種類は少なく、調整を上手くしないとAIらしさが出やすいというクセもあります。

しかし、TikTokやYouTube Shortsのようなテンポの速い動画では、ElevenLabsより相性が良いケースもあります。

用途に応じて使い分けるのがおすすめです。

AIがまだ人間に及ばない部分

ここまでAI音声の魅力を紹介してきましたが、それでも私は「人間だからこそできる表現」はまだまだこれからも残り続けていくと思います。

まず一つ目は、常軌を逸した表現です。

作品の世界観に合わせて、あえて不自然な間を入れたり、感情を爆発させるように叫んだり、囁く声から一気に張り上げたり──。

AIは「自然に読む」ことは得意ですが、「あえて不自然に読む」という演出や、その意図まではまだ再現できません。

また、プロのナレーターは、文節ごとの間や抑揚、緩急を非常にロジカルに組み立てながら読んでいます。

現状のAIには、その細かな設計を自在にコントロールできるレベルにはまだ達していないと感じます。

特に日本語はアクセントが難しく、オノマトペなどは何十回生成してもうまくいかないこともあります。個人的には、ElevenLabsにアクセント修正機能が実装されることを期待しています。

そして何より、人間のナレーターにはその人の声だからこそ伝わる価値があります。

「この番組といえば、この声。」
「このキャラクターといえば、この声。」

そう思い浮かぶ声が、誰にでも一つはあるのではないでしょうか。

以前、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』で、『水曜日のダウンタウン』のナレーターでお馴染みの服部潤さんが、リスナーから届いた「絶対に服部潤さんが言わなさそうなナレーション」をその場で読むという企画がありました。

意味不明で支離滅裂な文章ばかりだったにもかかわらず、服部さんが読んだ瞬間、それらはすべて”服部潤さんワールド”へと変わってしまったのです。

技術力はもちろんですが、長年積み重ねてきた声の印象や世界観があるからこそ生まれる表現でした。私はその回を聴きながら、涙が出るほど笑い、「声」というものが持つ力に改めて驚かされました。

AIがさらに進化し、音程や抑揚まで自由に制御できる時代が来るかもしれません。

それでも、「その人だから聞きたい」と思わせる声や、長年積み重ねられたブランドは簡単には再現できないでしょう。

AIはこれからもナレーション制作を大きく変えていきます。

それでも、人だからこそ生まれる独創性や、その人自身が持つ声の魅力は残り続ける。

私は、その価値こそが、これから先もナレーターという仕事を支え続けると信じています。

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